マーケットニュース

米雇用統計を控えた市場心理は気まぐれか

2024年9月4日

市場のセンチメントやマクロ指標への反応は気まぐれなものだ。期待はずれのマクロ・データが中央銀行の好意的な動きを期待させれば、「悪いニュースが良いニュース」になることもある。しかし、最新の米製造業データに対する市場の反応は、現在が「悪いニュースは悪いニュース」の段階にあることを示していた。米国の製造業活動がまた落ち込んだことで、リスク資産は週明けに下落し、先月初めに世界市場で見られたような動きを少し思い起こさせた。しかし、今のところ、8月に見られたようなパニック的な売りには至っていない。

そのため、市場は気難しい経済データのおかげで再び不安定なスタートを切ったが、今週はもっと花火が上がるかもしれない。米国の雇用統計には、金融市場の安定を「揺さぶる」歴史がある。先月のNFP(非農業部門雇用者数)の低水準は(日本の利上げと相まって)市場を動揺させたが、投資家はまだ「R(リセッション)」の文字に神経をとがらせているため、市場の勢いという点でも、実際に金利面でのFRBの潜在的なアクションの大きさという点でも、この次のNFPの数字にはかなりのものがかかっている。

米国の労働市場データを読み解くのは難しく、過去1年間の数値の下方修正を考えると、その数値が本当に正確なのか疑問に思う。とはいえ、市場はヘッドラインの数字に反応するだろう。8月の雇用者数は16万5,000人がコンセンサス予想だ。もし2ヵ月連続でNFPの数字が15万人よりも10万人に近い数字となれば、市場心理はまたも動揺するだろう。FRBがより積極的な利下げに踏み切る可能性はあるにせよ。雇用統計に対する米ドルと債券利回りの反応は、この結果が今月のFOMCへの期待にどのような影響を与えるかを物語るだろう。

FXでは、米ドルは8月の安値から上昇を続けており、グリーンバックのショートの動きは少し疲れ気味に見える。ドルインデックス(DXY)は、(先月末の)安値から1%強の小幅な反発を見せており、短期的な方向性は、米国のNFPの印刷がFOMCの金利予想にどのように影響するかによって決まるだろう。ドル円は、今月は全般的に堅調に推移しているものの、円に対しては厳しい状況が続いている。日本銀行(BOJ)のタカ派的なレトリックにより、日本円は上昇を記録し、日本銀行(BOJ)は市場にさらなる政策引き締めが行われる可能性があることを示唆した。

金の勢いは、米ドルの反発が貴金属のさらなる上昇を阻む要因となって失速の兆しを見せている。スポット価格は再び2500ドルの水準を割り込んだ(水曜日のアジア取引時間時点)。しかし、地政学的リスクや米金利が低下するとの見通しを背景に、投資家が金を選好しているため、下げ幅は限定的となった。注視すべきレベルとしては、2476ドルのサポートと2458ドルの戻しがあり、当面のレジスタンスは2508ドルと2525ドルに控えている。

今週の米雇用統計でどのようなカードが出るかは、金の反落が起こるか、上昇トレンドが再開するかの決定要因となる。もし雇用統計が、FRBが年末までに一連の利下げを積極的に行う必要があることを示唆するならば、それはおそらく金にとって好都合だろう。基本的に、金が上昇する可能性のあるシナリオは複数あるが、米ドルが大きく反発するリスクは残る。

その他では、中国と米国が先週発表した製造業景況指数が低水準だったことが、エネルギー需要の見通しを悪化させ、その結果、原油価格が下落した。原油価格は70ドル台(米国契約)で推移しており、来月からのOPECによる供給増も価格を押し下げている。しかし、原油価格の低迷が続けば、OPEC加盟国が増産に踏み切るかどうか疑問が残る。採算の観点から、OPEC加盟国の一部にとって原油価格が不利な領域に入る可能性があるからだ。

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